恋愛メンテナンス
スイッチがオンの時は、ベラベラと毒舌を並べて話すのに。

オフの時は、無口で知らん顔。

そうかと思えば、優しい顔してきたり。

何を考えているのか、分かりづらい。

あなたは私の事を、分かってくれてるみたいだけど。

私は全然あなたの事が分からない。

「はい、召し上がれ」

親切によそってあげて、

「じゃあ、いただきます」

永田さんは口の中で、ホクホクさせながら食べていた。

私は、永田さんの右隣りで一緒に食べる。

「ねぇ、あんた所で、何で俺と鍋な訳?」

「何でなんて、クリスマスだから?」

「結局、1人で居て寂しいからだろ?」

「寂しいとか…それもあるけど。それだけじゃないし…」

「ふぅ~ん…」

まだ、まだ好きだなんて言えない。

好きって言ったら、私だけが一方的に好きの片思いみたいで。

弱みを握られるみたいで、嫌だから。

もう少しだけ、永田さんの心の中を知らなきゃ、気持ちなんて言えない。

私も、試してるかも。

最初はやっぱり気まずいから、仕事の話をして。

「あんたも食えよ、ほら」

なんて、私のをよそってくれた。

色々と共通な部分を探しながら、話をする。

ちょっと無理してる、私。

永田さんは、ほぼ聞き手ばっかりだし。

もしかして、一緒にいると俗に言う「つまらない男」ってやつ?

やだやだ、そんなの。

こんなに、顔がカッコイイのに。

勿体無い。

この地味で陰湿な性格。

「あぁ、そう。ふぅ~ん…」

「へぇ~、なるほどねぇ…」

そればっか言って、何故か最後にどっか見てニヤリと笑う。

お喋りな男、声の大きい男は大ッ嫌い。

自慢話だとか、難しい話をされるのも大ッ嫌い。

そう思えば。

永田さんみたいな人が、私の理想の彼氏のような気もするけど。

でも、ちょっと愛想無さ過ぎじゃないの?

「ねぇ、楽しい?」

「ん?全然楽しくねぇけどぉ?」

おいーっ!……。

ショック死するーっ!

「もぉ!そういうとこで、素直過ぎるってば!」

永田さんは私の反応に嘲笑う。

鍋も食べ終わる頃には、何だか私は気疲れと、お腹もまんぷくで。

コタツで寝っ転がって、スマホをいじる。

完全に独りで、くつろいじゃってまーす☆

永田さんはというと…。

流し台の前で、鍋を洗っている。

「悪いねぇ、永田さん」

「別にぃ」

「そんな事、今しなくてもいいのにさぁ」

「今やらないと、気分が悪りぃからな」

「あっそうですかぁ」

すぐに片付けられたら、寂しいじゃん。




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