恋愛メンテナンス
「えっ?…」

アホヅラ?可愛い?…

永田さんも起き上がり、私を睨む。

意味…意味不明。

訳、分かんないコイツ。

永田さんは私の手を、しばらくは離してくれなかった。

気が付いたら深夜の2時を回っていて。

モモちゃんの言葉の通り。

急に前よりも、寄り添おうとする心が近くなって。

私はコタツの中に、寝っ転がって埋もれて呟く。

「寒いから、ここに居てよ…」

「寒いんじゃなくて、寂しいんだろ?」

ワガママの度合いも、ストレートになる。

「もぉ~っ、どっちでもいいから、ここに居てよ…」

「なんだ、そりゃ」

永田さんも仕方ないって顔して、寝っ転がって、また私の頭を撫でるから一気に眠気がやってくる。

「…永田さん…やっぱり変な人…だって、優しくなったり…そうじゃなかったり…するんだもん…振り回されて…疲れちゃう…」

「…あんたがもう少し、素直で落ち着きのある女で居てくれたら、優しくしてやんのになぁ…」

「もぉ…誰と比べて言ってんのさぁ…その辺りで普通に生きてる、つまんない女たちと一緒の扱いしないでよ…」

あんたの離婚したのか、別居中なのか知らないけど。

そんな女と私は絶対に同類にされたくない。

なのに、

「またそんな言い方したら…ダメだ…」

「私は特別なの…私が普通だったら…面白くないでしょ?…」

「まぁ、確かにそうだけど…」

「あんただって、私からしたら普通じゃないし…」

「あんたに言われたら、おしまい…だけどさぁ…そんな病んでるような言い方、わざわざするぐらいなら…素直に一言、寂しいって言えっての…」

「…うん…本当はね…寂しいよ…」

不思議なくらい、眠気に惑わされながら、永田さんには素直に言えてしまった。

「…なぁ?…そうやって一言吐いちまえば、少しは気が納まるんだから…今のあんたは…可愛かったよ…」

また、可愛いって言いやがった。

フワッとして、ドキドキしてきた。

「ねぇ…眠いからもう…寝ていい?…」

「あぁ、いいよ」

「ねぇ…ここで寝てもいい?…」

私は永田さんの胸に手を寄せた。

「いいよ…おいで…」

えへへ…もうちょっとだけ…近くへ…。

うわぁ…温かいなぁ…

「ちっこいオバハン…よしよし…」

私は永田さんを初めて見た、あの時の銭湯での光景を思い出す。

この胸の中に居るとねぇ…

嫌なこと…そりゃあ全部…忘れちゃうよ…

大きいもん…温かさで…包み込まれて…

吸収されちゃう…消えちゃうもん…

「よしよし…よしよし…」

これが、人の親なんだぁ…

「お父さんみたい…」

「はぁ?…アホだな、おまえは…」

夢から醒めたら、永田さんは妙に以前よりも優しくなっていた。

夢の中の2人のように。

少ない言葉で、素直に想いを伝い合える仲になれたらいいのにね…。

永田さん…大好き…。

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