恋愛メンテナンス
どうやら、この機械はポリッシャーと呼ぶ、床磨き専用マシーンだそうだ。
それを、しばらく任せられて。
永田さんは、私の事を見張りながら自分の作業をする。
しかし、予想していた通り声を掛けられてしまった。
「美空さんじゃないの?」
「あっ…」
うげっ!…見つかってしまった。
元同僚の女子社員。
「久しぶりだね、元気してた?」
「あぁ、うん。この通り元気」
「そう言えば、チラッと聞いたよ。結婚破棄になったみたいだね?」
「えっ?」
結婚破棄?
ってか、何でイチイチあの男はバラす訳?
「美空さん辞めちゃって、変な噂が広まってさぁ。美空さんの彼を昔からずっと狙ってた人事課の、ほら、お嬢様みたいな女がいたじゃない?あれが、相当言い寄ってるみたいなのぉ~」
「へぇ~、でももう彼氏じゃないし関係ないから、好きにしたらいいんじゃないのぉ?」
言い寄ってる女が居るなら、素直にそっちに行けばいいのに。
あんなキモイ男で良いって思ってくれるだけ、有難いと思わなきゃ。
「でもね、みんなの手前。美空さんの時の事もあるからヘタに付き合えないみたいな雰囲気は表面上は出してるけどぉ…」
あぁ、あの時の。
アイツの、ふざけたサプライズで周りに迷惑掛けたから。
そりゃあ、ヘタな事は出来ないだろうね。
「実際は、2人で食事にはもう、とっくに行ってるんだってさぁ」
「はぁ?!マジ?」
とんだ、大嘘付きだなぁ。
ウザイ元彼、マジ死んでくれ。
「結局、あの人は結婚してくれそうな女なら誰でもいいみたいね?」
「そういう奴なんだろうね…」
結婚して、幸せにしたい。
そうじゃなくて、自分がソレに浸りたいだけじゃないの?
と、言うよりも。
結婚して自分の支配下に置きたいだけじゃないの?
子どもこさえて、家の中に閉じ込めて、家政婦ならば稼ぎはあるけど、家の事は全部任せてタダ働きさせて。
挙句の果てには、俺の言う事を聞いていればいい!だとか、偉そうに吐かしたいだけじゃないの?
私、絶対にそんなふうな扱いは御免だね。
余計に病むわ!
「ごめんね、仕事中だから」
私は話を切り上げて、また作業に集中した。
永田さんは、知らん顔して作業をしてるけど。
…やっぱり時々、私を見張ってる。
私も知らん顔して床だけ見てるけど。
視線ビリビリ感じるもん。
さぼれねぇな、こりゃ。
作業も終わり、車に清掃器具を入れ込んでる間、永田さんは事務所に挨拶をしに行って、私と若い男の子2人で居た。
「としこっ!」
呼ばれて振り返りと、ウザイ元彼だった。
「最悪っ…」
「おまえ、なんだよ。その作業服姿。そんな格好で、どうして清掃会社だなんて所で働いてんだよ」
細身のスーツでビシッと決めた元彼は、私の頬に触れようとした。
「いいじゃんよ、関係ないじゃんよ」
とっさに避けて、そっぽを向く。
「そんな姿のとしこだなんて。そうまでしても独り身を選ぶのかよ。俺だったらそんな可哀想な暮らしは、絶対にさせないのに」
な、何言ってんだコイツ?
今だにまだ、言うのかコイツ?
「うるさいなぁ、早く仕事に戻ってよ」
言い寄ってくる女を大切にしてやりゃ、いいじゃないの!
それを、しばらく任せられて。
永田さんは、私の事を見張りながら自分の作業をする。
しかし、予想していた通り声を掛けられてしまった。
「美空さんじゃないの?」
「あっ…」
うげっ!…見つかってしまった。
元同僚の女子社員。
「久しぶりだね、元気してた?」
「あぁ、うん。この通り元気」
「そう言えば、チラッと聞いたよ。結婚破棄になったみたいだね?」
「えっ?」
結婚破棄?
ってか、何でイチイチあの男はバラす訳?
「美空さん辞めちゃって、変な噂が広まってさぁ。美空さんの彼を昔からずっと狙ってた人事課の、ほら、お嬢様みたいな女がいたじゃない?あれが、相当言い寄ってるみたいなのぉ~」
「へぇ~、でももう彼氏じゃないし関係ないから、好きにしたらいいんじゃないのぉ?」
言い寄ってる女が居るなら、素直にそっちに行けばいいのに。
あんなキモイ男で良いって思ってくれるだけ、有難いと思わなきゃ。
「でもね、みんなの手前。美空さんの時の事もあるからヘタに付き合えないみたいな雰囲気は表面上は出してるけどぉ…」
あぁ、あの時の。
アイツの、ふざけたサプライズで周りに迷惑掛けたから。
そりゃあ、ヘタな事は出来ないだろうね。
「実際は、2人で食事にはもう、とっくに行ってるんだってさぁ」
「はぁ?!マジ?」
とんだ、大嘘付きだなぁ。
ウザイ元彼、マジ死んでくれ。
「結局、あの人は結婚してくれそうな女なら誰でもいいみたいね?」
「そういう奴なんだろうね…」
結婚して、幸せにしたい。
そうじゃなくて、自分がソレに浸りたいだけじゃないの?
と、言うよりも。
結婚して自分の支配下に置きたいだけじゃないの?
子どもこさえて、家の中に閉じ込めて、家政婦ならば稼ぎはあるけど、家の事は全部任せてタダ働きさせて。
挙句の果てには、俺の言う事を聞いていればいい!だとか、偉そうに吐かしたいだけじゃないの?
私、絶対にそんなふうな扱いは御免だね。
余計に病むわ!
「ごめんね、仕事中だから」
私は話を切り上げて、また作業に集中した。
永田さんは、知らん顔して作業をしてるけど。
…やっぱり時々、私を見張ってる。
私も知らん顔して床だけ見てるけど。
視線ビリビリ感じるもん。
さぼれねぇな、こりゃ。
作業も終わり、車に清掃器具を入れ込んでる間、永田さんは事務所に挨拶をしに行って、私と若い男の子2人で居た。
「としこっ!」
呼ばれて振り返りと、ウザイ元彼だった。
「最悪っ…」
「おまえ、なんだよ。その作業服姿。そんな格好で、どうして清掃会社だなんて所で働いてんだよ」
細身のスーツでビシッと決めた元彼は、私の頬に触れようとした。
「いいじゃんよ、関係ないじゃんよ」
とっさに避けて、そっぽを向く。
「そんな姿のとしこだなんて。そうまでしても独り身を選ぶのかよ。俺だったらそんな可哀想な暮らしは、絶対にさせないのに」
な、何言ってんだコイツ?
今だにまだ、言うのかコイツ?
「うるさいなぁ、早く仕事に戻ってよ」
言い寄ってくる女を大切にしてやりゃ、いいじゃないの!