恋愛メンテナンス
clean 19 除夜の鐘
その日の夜、突然永田さんが私の部屋へとやって来て。

何を言うかと思いきや、珍しく謝ってきたのだ。

恐ろしい。

「悪かったな、今日の作業場。知らんかったとは言え、まさかあんたの元彼がいるビルだったなんて、思わなくて」

「全然。それよりもまた嘘付かせちゃって、こっちこそ毎度毎度助けてくれて、ありがとうね」

玄関の扉を閉めて、話し込む。

「次からはアソコは、別の人間に行かせるわ。アイツ、ちょっとストーカーっぽくなってるし、危ねぇからな」

頭をポリポリ掻きながら、照れ臭さそうに言ってるその仕草も、可愛いじゃんよ。

近いうち、大雪になるかもね。

コイツのこんなシタテな態度で。

「うん。気を使ってくれて、ありがとう」

ありがとう。

少しでも私の事を大切にしてくれて。

大好きな人に、そんな特別にして貰えるだけでも、私は嬉しいよ。

「じゃあ、俺戻るな」

「えっ?もう?」

「はぁ?だって」

「聞きたい事があるの!大晦日って、やっぱり家族と過ごすの?」

次のイベントは大晦日と元旦。

ここを一緒に過ごせれたら、もう永田さんのほぼ80%は私が支配したも同然。

「そりゃあ、ゆっくりしたいからなぁ。あんたは家族と過ごさないの?」

「過ごさないよ!」

「あっそう」

隣りは居ない。

102号室の変なオタッキーも、毎年暮れになると遠方の実家へと、帰郷する事は知っている。

このチャンスを絶対に逃したくない。

…や…れ…る…。

女として生まれたんだから、そして好きな男には、絶対にキスから心を奪ってやるんだから。

「で、なんなの?あんたは、ここに残るって?俺は家族と過ごすって…」

ダ、ダメッ!

あなたを、大晦日と元旦に元奥さんか、なんだか知らないけど!

そんな女の元には帰さないし!

子どもなんぞ、絶対抱かせてやらない!

あんたが抱くのは、この私!

「えーっ、寂しいじゃんよ。女独りでストーカーに怯えながら、大晦日も元旦も過ごせっての?やだ、そんなの。もしそれで殺人が起きたら、あんたのせいだし!」

「知るかよ、そんなの」

「寂しいって素直になれって言った癖に」

私は永田さんの裾を摘んで、不貞腐れた。

絶対に、お前を犯してやる。

そのための2日間は、神様がくれたチャンスなんだから。

「寂しいってなぁ…寂しいなら尚更、実家で家族と過ごしゃいいだろ?本当にあんたって人は…」

「いい?」

見上げた瞬間、永田さんは違う方を向いて、

「しょうがねぇなぁ、もぉ。次はあんたが俺ん家に来いよ?」

「えっ?マジ?!」

全然、こっちを見ないで永田さんはどっか上の方目掛けて言った。

「年越しそば食うぞ」

やったー!

アヒャーッ!

寂しいって言うと、良いこと有るね☆



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