恋愛メンテナンス
歌番組を見ながら、そばをすすり。

時々、お互いに知ってる歌を口ずさんだり。

テンションが上がって、カラオケに一緒に行く約束までしちゃった。

口約束だけじゃ嫌だから、絶対に行けるように、年始の休みを聞き出して、その日を確実に押さえておく。

除夜の鐘が鳴る中、私と永田さんは近くのお寺へと歩いて出掛ける。

「寒いから、早く帰りてぇな」

とか言っても、嫌がらないで除夜の鐘を突くのに並んでくれる。

「突く前に合掌してね、絶対! 」

「合掌して、去年過ごせた事に感謝だろ?」

「違う!」

何を古臭い事を言ってんのよ。

それじゃ、どっかのクソジジイじゃないの。

「合掌して、私のお願いを叶えて下さいってやるの!」

「はぁ?!あんたなぁ、それ絶対に間違えてるって」

「いいの!」

そして私と永田さんの番が来て、まずは合掌。

私が縄を握るその上から、彼の大きな手が包み込む。

「せーの」
「せーの」

声が自然と揃った。

ゴーン…ゴーン…ゴーン…

鐘の音は、最初は重たく大きく響き渡り。

徐々に小さく流れるように響き渡る。

「あっ、雪」

「おおっ、こりゃ寒い訳だ。大粒だな…」

人混みの中、どさくさ紛れに私は永田さんの胸の中へと飛び込んでやる。

ぬくぬくして、温かいなぁ…。

「よし、もう帰ろう」

「うんうん!」

「マジに寒いし、冷えるなぁ~…」

両手を擦っているから、それをよく見ると。

凄い手荒れをしていた。

「手荒れ酷いね?」

「いや、ちょっとお湯使ってやったら、すぐこんなふうになっちまうんだ。でもまぁ、知らんうちに治ってるから、気にならないけどねぇ」

アパートに着くと、

「先に部屋に居ってて。ちょっと私、忘れ物したからっ」

「おぅ、分かった…」

私は自分の部屋にあった、尿素たっぷり配合のハンドクリームを探して、持ってまた永田さんの部屋へと戻った。

寒そうにしながら、

「あんたはバタバタ、落ち着きねぇな。何を取りに戻ったんだよ」

ソファーに座る永田さんの隣りに私も座って。

ポケットからハンドクリームを取り出した。

「これ、そんなにベタベタしないし無香料だから、オススメなの。潤いたっぷりだし、伸びもいいのよ…」

「………」

「はい、手ぇ出して?…」

私は永田さんの手にハンドクリームを付けて、塗ってあげた。

永田さんは何も言わない。

黙って塗り続けていると、グッと手元を引っ込めて寄せるから。

私もそのまま永田さんの方へと寄せられた。

不自然なくらい顔を傾けて覗かれて。

えっ…?

…チュッ…

静かに口唇に、軽くキスをされた。

「ねぇ…それ…もしかして…狙ってやってんの?…」

小さな声で呟かれた。

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