恋愛メンテナンス
clean 23 最悪なバレンタイン
もう、やる気ないし。

仕事来ても、これ以上は頑張りたくないし。

別にアルバイトなんだし、その程度の仕事の仕方しておけばいいんでしょ?

短時間なんだから、短時間なりの仕事の仕方をして、時間が過ぎて、とっとと帰ればいいんでしょ?

…とか、不貞腐れていても…。

なんで、こんなにコキ使われて、窓を吹いてるのかねぇ。

「美空ちゃん、窓枠のゴムのとこもねぇ」

「あーい!」

気が抜けて、「はい」と返事も出来ない。

今日は現場で働くオバチャンたちのお手伝いで、マンション清掃。

オバチャンたちは優しいよ。

私のために、ピクニックみたいにたくさんのおかずとオニギリを作って来てくれて。

昼休憩に女子トークで花が咲く。

「美空ちゃん、早く長時間にして貰えるといいのにねぇ」

「私らと一緒に持ち場を回れりゃ、私らがラク出来るのにぃ」

「ラクじゃなくて、助かる…でしょがぁ~」

嬉しいなぁ、そう言って貰って。

「永田副所長もイジワルだねぇ」

「アイツ、厳しい所が有るからねぇ」

私はオニギリを食べながら、

「やっぱり?でしょ?絶対イジメですよ!アイツに言ってやって下さいよぉ」

文句ブーブー。

「本人のいる前で、無理ですね。なんて、言ったらいかんわなぁ」

私は何度も頷きながら、

「いかんいかん」

バクバクまた食べまくる。

「何、考えてんだろうねぇ」

オバチャンは、アレやコレやと、私にお弁当の具を差し出しながら、愚痴をたっぷり聞いてくれた。

「こんな若い女の子が、こんなふうになって働いてくれてんのにねぇ」

そうだそうだ。

「私、帰ってショックで泣きまくりましたもぉん…」

「あんた、こんなお掃除のお仕事で泣くのぉ?やだわぁ、真面目だねぇ」

「まぁ許せんな。永田めぇ。女の子泣かした罪で、責任とって異動して貰わなきゃねぇ」

ボロカス言われたらいい。

オバチャンたちの毒舌のが、あんたの毒舌よりもハードなんだから。

輝の冷徹おタンちん野郎が!

ザマーミーロォー!!

………。

とか言いながら、帰り道でバレンタインの飾り付けを見て、ドキドキする私。

…チョコ、買わなきゃ。

…美味しくて、高いチョコ、買わなきゃ。

…来週の予定、立てなきゃ。

私、つくづく輝に惚れてる。

ムカツクのに、どうしようもなく、一緒に過ごしたい。

悔しい!

私は、当たり前のように店内へと入って、チョコを無意識のうちに手に取り、輝の喜ぶ顔を浮かばせながら、選んでいた。

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