恋愛メンテナンス
モモちゃんにメールを打つ途中に、こみ上げて涙を流す。

自分で打ってる文書の内容で、どれだけ自分が輝に酷い言葉、無神経な言葉を言ってしまったんだろうって。

つくづくアホだって思って。

『付かず離れずがいいから、一緒には住まないって。遠距離で、それで終わってしまうなら、それまで。それだけの縁だ…なんて言っちゃって…どうしたらいいの…涙が止まらない』

離れたら、気持ちまで離れるじゃねぇか…。

輝が静岡へ行ってしまうまでの数日間。

なんとなく本当に、どんどん輝の気持ちが離れていっているような気がした。

モモちゃんと久しぶりに会って、食事をする事になった。

もう、独りで居られないくって。

目も合わせてくれない輝に、何も話し掛けられない自分が、図々しくも輝の部屋の上に住んでて。

気まずくて。

最終的に輝の事で、私は家に居られなくなっていた。

「たぶん永田さんが、としこっちを長時間パートにしなかったのは、静岡に連れて行こうとしてたからじゃないのかなぁ。アルバイトなら雇用契約の解除は簡単だしさぁ。だから、としこっちに掃除の仕事を、のめり込ませないように頑張るなって言ったんだと思うよ?」

「そ、そ、そんなぁ~…じゃあ、そう言えよぉ」

ガックシ!!(↓)

「言えないでしょ、最初にとしこっちが、条件出してんだもん。永田さんだって、相当言葉を選んだと思うよ?でも、そうまでしても、としこっちと一緒に住みたかったんだから、苦しんで悩んでたのは永田さんの方だからね?」

「アイツも悩むんかい…」

ガックシ!!(↓)

モモちゃんの言葉に、また涙が滝のように流れる。

「もうあれから全然、目も合わせてくれないし、口も利いてくれないのぉ」

「そりゃそうでしょ。としこっちが、それだけの縁だ、なんてトドメ刺す事、言うからぁ。恋人になって始まったばかりなのにさぁ」

あっさり言われて、ショックでまた泣いた。

だってだって!結婚したくないもん!

一緒に住んだら、結婚する事になってしまうもん。

誰かの奥様?女房?妻だなんて。

枯れる!

ましてや、親の圧力、既婚者としての重圧、子ども作れ!子ども産め!子孫を残せ!などと言われ。

産んだら、私の価値も意思も無くなる。

さらに腐る!

「別にさぁ、同棲くらいはしたっていいじゃんよぉ。それとも、ソレもとしこっちのルールに反するの?同棲して永田さんの一面を知れるチャンスじゃん。そこで駄目だったら、それまでの仲って判断すればいいのにぃ」

「そうだねぇ…」

でもさぁ、私。

それが逆の立場になったとしたら、ショックってのもあるじゃないの?

私、本当に私生活もモノの考え方も、その辺りの女と感覚が違うから。

輝なんて、どう見ても常識人だからヒクと思うんだよね。

絶対に誰も、私の気持ちや考え方なんて、理解出来ないと思ってるから。

本気で子ども、欲しくないって事だとかね。

そこはどうしても、本心で嫌なの。



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