friendship
第三話 病気


教室に戻ると、永原真央の周りには
人が集まっていた。


「あ、亜紀ちゃん」


アタシを見つけると、
いつもそうやって呼ぶ。

その言葉に反応したクラスの皆が、
アタシ達3人を見る。


「何見てんだよ」


奈々が呟くと、皆は目をそらし
席に戻ったり他の場所に移動する。


「今ね、クラス会の企画考えてたんだ!キャンプと学校にお泊まりで別れてるんだけど、3人はどうしたい?」
「興味ない、奈々は参加しない」


沙織はアタシを見る。
アタシは沙織を見た後、永原真央を見た。


「無理に参加しなくても良いんだけどね」


初めて、永原真央が弱気になった。


「・・・キャンプ」
「えっ?」
「キャンプが良いって言ってんだよ。文句あるか」
「そっか!分かった」


奈々に睨まれてる気がしたけど、
あえて見ないようにした。

放課後になり、アタシは奈々の誘いを断り
教室に残っていた。


「目的地がここだから・・・このルートで行った方が早く着くか」


永原真央は、1人でクラス会の
企画を作成している。
教室にはアタシと永原真央だけ。


「あのさ・・・独り言やめてくんない?」
「あっ、ごめんね。・・・あれ、奈々ちゃん達と帰らなかったの?」
「遊ぶ気分じゃないから」
「・・・前に、家族は妹しかいないって言ったでしょ?両親はお金を稼ごうとしてたんだけど、悪い会社に騙されて・・・借金を背負わされた。それで、自殺しちゃったの」


アタシは永原真央の前に座った。


「生きてるか死んでるか分かってる方が・・・良いよな」


アタシの親の生死は分からない。


「物心がついた頃から、アタシは1人だった。広い家に・・・1人ぼっち」
「生活はどうやって?」
「1人で頑張ってた。時々、母親の妹が食べ物を買ってきて、料理を作ってくれた。でも・・・中学生になったら、それは無くなった」


なぜ、彼女にこんな事を話しているんだろう。
同じ境遇だから、アタシ達3人と同じだから?


「ってか、この道・・・今閉鎖してるよ」


アタシは線が引かれてる地図を指さした。


「前に事故があって、通れなくなった」
「そうなんだー。ありがとう、教えてくれて」
「遠回りでも良くない?」
「・・・あ、今普通に亜紀ちゃんと会話してる」


満面の笑顔でこっちを見た。
完全にアタシに心を開いている。


「そろそろ、名前で呼んでほしいな」
「・・・永原」
「んー、いつか下の名前で呼んでね」
「・・・あのさ、一緒に帰んない?」


鞄を持って、席を立った。
永原は嬉しそうに頷いた。















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