妖精と彼女【完】
あたしのベッドから降りて、愛の近くまで駆け寄る。
愛の方が一つ年下なのに、その仕草は子どもっぽくてトウの方が年下みたい。
トウも結構背が高いけど、愛の方が身長が高くて見下ろす格好になる。
愛は無言でトウを見つめていた。
愛のリアクションがないことにも慣れているようで、返事が返ってこなくても気にせずトウは話しかけ続ける。
「愛くんが元気そうで、俺、安心したよー!!」
「…………。」
それでもなお、シカトを決め込む愛。
この様子は、一年前から続いている。
さすがに無言が続いて気まずい部屋の雰囲気。
部屋の主であるあたしは、気まずさを何とかしようと思った。愛が部屋にやってきた理由を聞いてみることにした。
「そ…そーいえば愛、何か用事があったの??」
愛にそう話かけると、視線があたしに移動する。
あたしに話かけられたからか、少し安心したような目をしてる。
「……夕飯、今日は外で食べてきたら?って母さんが…」
「そっか、それで声をかけにきてくれたの?」
コクリ、と頷く愛。
「えー!?ちょっと待っ…それ!」
姉弟の やり取りにちょっと不満そうにしていたトウに、お隣の家から夕飯ができたと呼ばれる声がした。
その声を聞いて、トウは残念そうに口を尖らせた。
「ちぇー、まぁ、今日は帰るかな……じゃあまたね、悠ちゃん、愛くん!」
不満そうだった表情はどこへやら。
爽やかに手を振り、トウは自室へと帰っていった。
…………ベランダから。