妖精と彼女【完】
そして、あれから一年……変わらずトウはあたしのお隣さんとして暮らしている。
あたしとトウの部屋は運悪く、ベランダが向かいあっている。
それを利用して、いつもあたしの部屋に勝手に入ってくる。
それが一年も続くと、何となく慣れてくるもので……昔から、トウという存在はいたんじゃないかと思ってくる。
あたしも、催眠術や幻覚にかかっているのかもしれない。
トウがいなくなったあたしの部屋。
いるのは、あたしと愛の二人。
「………姉さん。」
愛の表情はポーカーフェイスなままだけど、咎めるような声と視線。
多分、あたしの部屋にトウが入ってきていたことに怒ってるんだろう。
「ごめん…戸締り忘れてた。」
謝っても、愛の表情はピクリとも動かない。
「………気をつけないと。いつか住み着いちゃうよ。」
愛はポツリとつぶやいた。
怒ってると思っていたけど、声色をうかがってみると…どうやら拗ねてたみたい。
…ちょっと可愛い。
そう思うと、笑いがこみ上げてきてあたしは吹き出した。