妖精と彼女【完】
綺音はテニス部に入っている。
周りの友達も部活に入っていて、毎日部活に明け暮れている。
やっぱり、たまにはちょっと羨ましいと思ったりもする。
でも、あたしは銭湯の手伝いが部活みたいなものだから良いかな!
………部員はあたしと弟の愛だけだけど。
よく晴れた日の帰り道。
ポカポカとした春の陽気の中、学校から帰っていると、前方に見慣れた後ろ姿を見つけた。
あたしはちょっと嬉しくなって、その後ろ姿に向けて声をかけることにした。
「愛ーっ!」
声をかけられた後ろ姿は、間も無く振り返る。
少し、嬉しそうな目をしたポーカーフェイスで。
「……姉さん。」
それは、弟の愛だった。
愛とは違う高校に通っている。
あたしは家から5分の学校に通っていて、愛は家から20分の学校。
普段はあたしの方が早く帰り着く。
合うようで合わないもので、たまに下校時間が重なると、一緒に帰れるからちょっと嬉しい。
「今帰り?」
「うん…姉さん、今日ちょっと遅いんだね。」
「そーかなー……」
いつもの愛のポーカーフェイスを見ていたら、ふと今日の教室での出来事を思い出した。