妖精と彼女【完】






「ふぅ……今日もキレイになったぞー!」





まず、女風呂の浴槽や洗い場、サウナ室内を清掃して、浴槽にお湯をためる。




そして洗い物を全部まとめて、業者さんに出す準備をする。
小さな、うちでどうにか出来るようなものなら大型のランドリーに。





そしてマットを交換して、脱衣所をキレイに片付ける。
あ、あと洗面台も。





「今日は清掃が楽な方だったなー…」


なんて一人言をつぶやいてみるけど、掃除が楽だった日はお客さんが少なかった……ということなので、あまり喜べない。





清掃に使った道具やらを片付けていると、女風呂と書かれたのれんの向こうに、誰か立っているのが見える。






「姉さん、終わった?」





「うん。愛も?」





「うん、終わった。」







女風呂と書かれたピンクののれんをくぐると、男風呂の清掃を終えた愛が立っていた。






「たとえお客さんがいない時間でも、女風呂には入るな」というのが、我が家代々の教えである。




…でも、あたしもお母さんも、必要があればガンガン男風呂に行く。



すごくデリカシーのある男性陣に対して、平気で男風呂に行く女性陣ばかりの家系らしい。
……お恥ずかしいことに。






清掃が終わる時間を見計らうように、両親が隣の家からやってきた。
両親は本当に仲がよく、とても睦まじい。




「悠、愛、今日もありがとうな」



「夕ご飯作ってあるから、二人で食べてねー。今日はカレーとサラダとスープだよー」






「「はーい」」






毎日のことだけど家族らしい会話もそこそこに、バトンタッチして姉弟は家へと帰る。





日課の清掃が終わったら、両親と入れ替わり、自分の部屋に戻って自由な時間が待っている。
そして夕ご飯を食べて、お風呂入って就寝…これがあたしの毎日の流れ。







そして自分の部屋に戻ってくると……何故か増えてる「もの」がいつもある。










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