妖精と彼女【完】
自室に向かい、ドアを開けると…いつもの光景が広がる。
「悠ちゃんお疲れ様ー!」
本来なら誰もいないはずの一人部屋から聞こえる明るい声。
ベッドの上にいつも我が物顔で寝転ぶ、トウの姿。
今日はマンガを持参している。
「………あたし、これから飛び出す刑事の録画見るから出てって?」
「えぇ?俺も一緒に見たい。」
勝手に上がり込んだくせに、悪びれる様子もない。
更に、あたしの愛する「飛び出す刑事」を一緒に見たがる。
…でも、コイツと一緒に見るとうるさくて、音声聞こえないからガチで嫌だ…。
ちょっとムカついて、トウを睨みつける。が、トウはあたしを見てニコッと微笑むだけで、特に効果はない。
あたしの抵抗が全く響かないのが悔しい。
こうなったら最後の手段しかない。
「その持ってきてるマンガでも読んでて。じゃなきゃ帰って。」
冷たく言い放つと、トウは一瞬泣きそうな顔をして焦りだした。
そして子供のように、地団駄をふむようにベッドの上で暴れ出した。
「やだやだ!マンガ読んでるから!!お願いいぃいー!!」
「あーもー…うるさい!!じゃあ静かにマンガ読んでろ」
「うん!静かに読んでるね★」
「………」
さっきの地団駄はどこへ行ったのか……。
トウのあまりのうるささに、居座ることをうっかり許してしまった。
もう、一年くらい似たようなやり取りを繰り返しているけど、トウのやり口がどんどん幼稚になっていっている気がする……。