妖精と彼女【完】





「悠ちゃんはお祭り行かないの?」





「うーん……」





急に話を振られてちょっとビックリしつつも考える。
でも、トウが行かないんなら……。





それはちょっとした意地悪のつもりだった。






「行こうかな。」




「えっ?こんな時間から?もうすぐ祭り終わるよ?」




……驚いた顔して、至極まっとうなこと言われた…。





「良いんだってば!彩音も行ってるし、あたしも行く!……ってゆうか、じゃあ何で聞いたの?」





「行かないって言うだろうなーって思ってたからー!」





何となくこれまでの経験上分かる。
コイツ、これからダダをこねてあたしを行かせないつもりだ……。


そうはさせるか!






「………行ってくる。だから、ちゃんと自分の家に帰ってよ!」





「………。」





トウは何か言いたげな目線だけよこしたけど、何も言わなかった。
あたしは、バッグを掴み家を出た。





トウは、あたしが家を出た後も、そっと窓からあたしの歩く姿を見つめていた。
それに、あたしが気付くことはなかった。










< 42 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop