妖精と彼女【完】
「悠ちゃんはお祭り行かないの?」
「うーん……」
急に話を振られてちょっとビックリしつつも考える。
でも、トウが行かないんなら……。
それはちょっとした意地悪のつもりだった。
「行こうかな。」
「えっ?こんな時間から?もうすぐ祭り終わるよ?」
……驚いた顔して、至極まっとうなこと言われた…。
「良いんだってば!彩音も行ってるし、あたしも行く!……ってゆうか、じゃあ何で聞いたの?」
「行かないって言うだろうなーって思ってたからー!」
何となくこれまでの経験上分かる。
コイツ、これからダダをこねてあたしを行かせないつもりだ……。
そうはさせるか!
「………行ってくる。だから、ちゃんと自分の家に帰ってよ!」
「………。」
トウは何か言いたげな目線だけよこしたけど、何も言わなかった。
あたしは、バッグを掴み家を出た。
トウは、あたしが家を出た後も、そっと窓からあたしの歩く姿を見つめていた。
それに、あたしが気付くことはなかった。