妖精と彼女【完】
夏とは言っても、8時前だともう真っ暗で。
鳴り止まない蝉の声と、ムシムシとした暑さがこたえる。
少し歩くだけでも、汗をすごくかいてしまうような暑さだった。
夜の通りは、お祭りだということもあり今日は若い子が多い。
徒歩やら自転車やらで、友達同士で遊びに来ているらしく、ワイワイと騒がしい声で溢れている。
お祭りが行われている神社は、家から歩いて5分程度の距離だった。
近付くにつれ、お囃子の音や屋台の売り込みの声がどんどん大きくなってくる。
そして、屋台の明かりが近くに見えてきた。
焼きそばやたこ焼き、綿あめやリンゴ飴とか…沢山屋台が並んだところまで辿り着いた。
……まずは。
「リンゴ飴だよねー!」
早速大好物のリンゴ飴を買い求める。お祭りに行ったら、絶対にリンゴ飴は買う!
そして綿あめを買って、広島焼きを買う。
立ち寄った全部の屋台のおじちゃんが、「お姉ちゃんキレイだねー」とか言いながらオマケしてくれた。
多分、若い人が近寄らない店にあたしが行ったから嬉しかったんだろう。
お世辞でもオマケは嬉しい!
食材を確保したあたしはホクホクとしながら、ふとあることを思い出す。
「…あ、彩音に電話!」
お祭りに来たら、電話かけてって言われてたんだった…。
まだこの辺にもいるかなと心配に思いながら、持ってきていたカバンを漁り、ケータイを探す。
その時。
「ねぇねぇ」