妖精と彼女【完】
妖精
あたしは普段の銭湯のお手伝いでは、開店前に女湯と玄関の清掃をする。
男湯は、いつも弟が清掃してるんだけど…ごくたまに、あたしがすることもある。
あの日は……その、ごくたまにの日だった。
〜1年前……〜
あの日あたしは、弟が委員会活動で遅くなるからと、久々に男湯の清掃を頼まれた。
男湯は普段清掃しないこともあって、新鮮でちょっとだけ楽しみだった。
「さーて!今日もがんば…る、………?」
ブラシとスポンジを片手ずつに持ったあたし。
男湯の、脱衣所と浴室を隔てるガラス戸を豪快に開け放つと、湯船の淵に誰かが立っていた。