妖精と彼女【完】






それから、半年以上の時間がたって…また新しい春がやってきた。







あたしは、高校三年生に進級した。







あんなに周りに教えてもらった「恋」という感情にはまだ縁遠く、あの後の冬、高木くんに人生初の告白をされたものの……交際の申し出はお断りすることにした。






こんな自分を好きだと言ってくれる人がいることは嬉しかった。
ただ、皆が言うような感情を彼には持てていなかった。







以前、トウが言っていた、
「誰かに好きだと言われて、自分も相手を好きになるのは、俺は恋愛じゃないと思う。」


ということを、実感することが出来たのは、良かったことになるのかもしれない。







あたしは相も変わらず、銭湯の清掃のお手伝いは毎日続けていて。
相も変わらず、トウは清掃を終えて部屋に戻るとあたしの部屋に居座っている。






少し変化があったのは、トウがあたしのことを会う度に「好きだ」というようになったこと。
だけど、その先には「あたしの返事」とか、「お付き合い」があるわけではない。




ただ、トウは言葉を重ねるだけだった。





そして、そんなトウを見つめる愛の視線が、3倍くらい怖くなったこと。





それくらいだった。











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