妖精と彼女【完】








その言葉を聞いて、あたしの気持ちは複雑に沈んだ。







「……やっぱり、そうなんだ。」






「…どうしたの?」






あたしの様子を見た彩音は、心配そうな顔で見つめて……そして、そっとあたしの手に触れる。





その手をじっと見つめる。
そしてその手のあたたかさを感じて、伝わる気持ち。






こうすれば、心配していることも、伝わるのに。

きっと、その他の感情も。






「……ううん。何でもない。」








それをしないのは、どうして…?














……あたしの悩みは、1ヶ月前にさかのぼる。









少しだけ季節は戻って……今年の春の始まり。





だんだんあたたかくなりかけていたのに……例年と比べても、その数日はとても寒かった。





寒暖の差が激しくて、あたしは風邪をひいてしまった。








それが、悩みの始まりでもあった。















< 68 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop