妖精と彼女【完】
その言葉を聞いて、あたしの気持ちは複雑に沈んだ。
「……やっぱり、そうなんだ。」
「…どうしたの?」
あたしの様子を見た彩音は、心配そうな顔で見つめて……そして、そっとあたしの手に触れる。
その手をじっと見つめる。
そしてその手のあたたかさを感じて、伝わる気持ち。
こうすれば、心配していることも、伝わるのに。
きっと、その他の感情も。
「……ううん。何でもない。」
それをしないのは、どうして…?
……あたしの悩みは、1ヶ月前にさかのぼる。
少しだけ季節は戻って……今年の春の始まり。
だんだんあたたかくなりかけていたのに……例年と比べても、その数日はとても寒かった。
寒暖の差が激しくて、あたしは風邪をひいてしまった。
それが、悩みの始まりでもあった。