妖精と彼女【完】
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「…ちゃん……悠ちゃん」
「ん……?」
あたしを呼ぶ、誰かの声が聞こえた。
1ヶ月前、あたしは久々に風邪をひいた。
ものすごい高熱が出て、あたしは学校を休んだ。
一人で寝込んでいた、平日のお昼過ぎ。
お昼ご飯を食べて、薬を飲んで眠っていた。
高熱にうなされている中、うっすらとあたしを呼ぶ声が聞こえて意識が浮上した。
「………お母さん…?」
あたしの両親は、夕方から銭湯にお仕事に行くから昼間は家にいる。
お昼ご飯にたまご粥を作ってくれたのも、お母さんだった。
てっきり、あたしの部屋にお母さんが様子を見に来たのかと思って、うっすらと目を開ける。
でも、違った。
その声の主は……
「悠ちゃん…?具合悪いの?」
「トウ………?」
ベッドの横に座り、あたしの顔を覗き込んでいたのは、お隣さんのトウだった。
ベランダのガラス戸は今日も鍵をかけていたのに、やっぱりどうやって入ってきているんだ……とか。
あたしと違う高校に通っているハズなのに、なぜあの時間に家にいたんだ……という疑問が今ならあるけど……。
あの時は、ボーッとしてて何も考えられなかった。
……不覚。