妖精と彼女【完】
目の前の男の子は、あたしの近くまで歩いてきた。
白っぽい服を着ていると思っていたけど、よく見たら白っぽい浴衣みたいな……着物だった。
足元は草履を履いていた。
なーんか古風な服装。
よくウチの銭湯に通ってるおじさんとかがよく着てるような……。
しかも土足じゃん……。
近づいてきているその顔は、微笑んでいる。
なんだか不思議な違和感があった。
ひとまず、声をかけてみようと決めた。
「あの……、まだ開店してないんですけど……?」
あたしに話しかけられた男の子は、その場に立ち止まった。
そして、ニコニコしたまま口を開いた。
「……倉本、悠ちゃん?」
「……はい??」
その人は、あたしの名前を知っていた。
なんで、あたしの名前………?