妖精と彼女【完】
「ゆっうちゃーん!」
ガララッという勢いのあるガラス戸が開く音がして、あたしは音が発生した方に目を向ける。
そこには、参考書みたいな本を持参したトウがにこやかに立っているけど……。
本当にそれどころじゃない。
「あのさ…トウ、帰ってくんない?で、しばらく来ないで?」
「えっ……」
一瞬、トウが泣きそうな顔をしたのを見て、なんか心は痛んだものの…あたしは自分の現状を思い出し、その言葉を取り消しはしなかった。
…そう。
それは嘘じゃない。
「あたし、勉強で忙しいから!」
トウは、少しポカン…とした顔をしていた。
「勉強……?」
「そう……多分、トウはあたしと同級生で、違う高校に通ってるって設定だけどさぁ」
「"設定"なんて生々しいから言わないで!!」
トウは体の前で両腕をクロスさせ、ダメだと強くアピールしてくる。
でもあたしはそれを無視する。