妖精と彼女【完】
「だからトウには関係ないと思うんだけど、もうすぐ大学受験ってのがあるの…。とりあえず、勉強を頑張りたいの。」
「大学……受験…?」
妖精だからなのか、受験というものをトウは全く知らないらしい。
……ダメだ、コイツ。
「…その受験って奴に向けて、悠ちゃんは勉強を頑張るってことだよね?」
「……。素晴らしい理解力ですね。」
話を要約できたトウを、呆れつつも褒めてみたものの…
「バカにしないでよー!」
とキレてきた。
……割とウザい。
とにかく、トウには伝わったようなので安心した。
実際、ここからが本題なんだけれど……。
さて、何て伝えようかと考えながらふとトウの顔を見ると、ものすごく暗い顔をしている。
なんか……世界の不幸を一身に背負っているような顔だ。
「ト…トウ?どうしたの…?」
「……悠ちゃん、それって……」
そこまでつぶやくと、トウは黙り込んでうつむいた。
あたしはさすがに心配になって、トウの顔を覗き込んだ。
「えっ!?」
ギョッとした。
だって、覗き込んだトウの目が、涙で潤んでいたから。
「えっ…な、なに!?何で泣いてんの!?」