妖精と彼女【完】
あたしは、実は少し前から将来について考えていたことがあった。
ちょっと恥ずかしくて、ずっと誰にも言えなかったんだけど…いい機会だし言ってみようと決意した。
意を決して、自分の手のひらをぎゅっと握った。
「……あたし、建築の勉強をしたいんです。」
「建築?あぁ、良いんじゃないか?理系だけど、倉本なら大丈夫だろうし。」
ケロッとして肯定してくる様子の先生に、あたしは拍子抜けした。
そして、ずっと無言だったお母さんを見ると、すごく目をキラキラさせてた……。
「へぇー、建築士なんて悠ちゃんに合ってそうだね!」
なんて言いながら、お母さんのテンションは上がっていた。
そして、妙にテンションの上がってきた先生……。
あたしの成績やらがまとまったファイルを眺めながら、楽しそうに何か考えている。
「そっかー…倉本は理工学部かな…。それなら建設で有名なN大か、W大とか目指す?」
「えっ!?そこ偏差値…」
「いや、今からなら大丈夫かもしれないよ。毎日真剣勉強すれば。」
……先生、適当すぎる。
そしてお母さんは、なんかキャッキャしてる。