桜花物語
私と夕壺さんの前には、沢山の料理が並べられた。

「夕壺様、桜の宮様、ごゆっくりお召し上がり下さいませ」

女達が礼をし、十二単をすりながら、去っていった。

「美味しいですね」

夕壺さんは、満面の笑みで私を見た。

「そうですね。この家の女達は、料理が皆上手いんですよ」

私は、扇で口元を隠しながら言った。

「それは羨ましいですね。家にも来てほしいです」

夕壺さんは、笑いながら本当に美味しそうに料理を召し上がった。

「ご馳走様でした」

夕壺さんは、手を合わせ一礼してから、また私を見つめた。

「そろそろ灯りを消しましょうか?」

女達が料理を下げた後、夕壺さんは静かに言った。
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