桜花物語
それから毎日、夕壺さんから手紙が届くようになった。

内容は、

「美しい貴方の姿をもう一度見たいと、毎晩月に願ごてうております」

と、いうのを和歌にしてあった。

私はその手紙を、大切にお父様がくれた宝箱にしまった。

そして返事を書いた、

「私も毎晩、夕壺様に会いたいと月に願ごうております。夕壺様のお顔が見たいと心から思うております」

そう書くと、女に渡した。

「誠に会いとうございます」

小さく言い、今晩も月夜を眺めた。
< 7 / 61 >

この作品をシェア

pagetop