漆黒の陰陽師~陰の王子と黄昏の姫~
「........!!!」
教室中が突然まき起こった風の話で騒がしい中、私は一人でずっと“彼”がいた場所を見続けていた。
妖怪.....?いや、でも今人間に変化したよね??
じゃああれは一体何....?
人間に化ける妖怪なんて見たことない.....。
それに何で.....あいつは....
“またね”
なんて言ったんだろう......。
急に嫌な汗が出てきて背中をツーっとなぞった。
「なぁ......」
「は、はひっ!!!」
急に隣から声がして思わず返事が裏返る。
みるとそこには机に伏したまま顔だけ少し上げてこちらに顔を向けている真田君。
相変わらず、長い前髪が黒縁で地味な眼鏡にかかっていて目が見えない。
「君さ......」
「........?」
真田くんはゆっくりと息をして少し顔をもたげた。
「見えたの?」
ふるりと前髪が揺れて、少しだけその下から真面目そうな眼鏡の奥の黒い目が覗いた。
「え......?」
思わぬ質問に、私は固まった。
キーンコーンカーンコーン
丁度チャイムがなって真田君はガタンと突然席を立ち
「ごめん、気にしないで」
というとそのまま教室を出ていってしまった。