漆黒の陰陽師~陰の王子と黄昏の姫~
私の席からはちょうど中庭が見え、その近くには樹齢何十年というようなとても大きい桜の木がある。
もう季節は過ぎてしまって緑の葉に着替えた桜の木は、ただでさえ大きな体を目一杯広げて太陽の光を浴びている〜。
その下の方を見てみると小さな猫がうずくまっていた。
暖かそうな陽だまりの中で気持ち良さそうにひらひらと長い尻尾を揺らしている。
そしてその尻尾はーー
二股に割れていた。
別に私は驚く事も無かった。
あぁ....あの子は“普通の”猫じゃないんだなぁ....
って、それぐらい。
そう。
私には見えるのだ。
普通の人には見えない
妖怪が見えるのだ。