私は異世界の魔法使い?!


ーーごくり。


乾いた口内。

そんな乾きを潤そうと喉を鳴らす音がやたらと耳に響く。


……大丈夫。

もう途中で挫けたりしない。

負けないって決めたから……自分にだけは。


「うん、いいよ……覚悟はとっくに出来てる!」


私は杖を掴み、その先端を巨大な影に向けて振りかざす。


『……承知した』


杖の声が聞こえたのと同時に、壁面に映し出された影は自身のそれを破るように引き裂き、姿を現した。

太く鋭い、鷲のくちばしのような爪が影から飛び出して、その開いた隙間から恐ろしいほどに鋭い眼光がこちらを覗き込む……。

大きな赤い瞳が私を捉えた時、一瞬背筋が震えた。

けれど目は逸らす事なく、挑むように見つめ返す。

イフリートのその姿はどんどん露になる。

自身の持つ爪で影を切り裂き、闘牛のような太い腕と二本の角を生やした頭。

まるで獣だ。

凶悪そうな口元からは炎が漏れ出ている。

浅黒い肌は影を破り、現れる。

瞳にも赤い炎を宿した魔人。



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