私は異世界の魔法使い?!
兎の耳を持った、幼子。
自分の事を時の番人だと言い、私をこの世界に連れて来た張本人。
一緒にこの宮殿を目指してたくせに、ピンチの時はさっさと姿を眩ました薄情者。
「……今頃なにしに来たのよ」
立ち上がったものの、自分の心の中に冷ややかなものを感じ、それを温めるべく再び湯船に浸かった。
私の視線は相当冷たいのだろうな。
ノアは長い耳をピクピクと揺らし、体をモジモジとさせながら私の頭上を飛んでいる。
モジモジした様子が母性をくすぐる可愛いさを醸し出しているだけでなく、申し訳なさそうな空気もバンバン伝わる……が、そんなものに騙されたりはしない。
「やっぱり、おっ、怒って……」
「当たり前」
きっぱり。
私の言葉はノアの語尾を塗りつぶす。
その後ギロリとひと睨みもおまけして。
だって本当に大変だったんだから。
私を助ける為にノアはやって来たって言った。
それなのにあっという間に居なくなるんだもん。
その上、私はこっちの世界でも死にそうになるし……いくら子供だからって穏便に会話出来るほど私は大人じゃない。