私は異世界の魔法使い?!
ノアは何でもいちいち言葉にするから余計腹が立つのだが、知らなかったとはいえ悪い事をしたと思う自分もいるわけで……とりあえず浴槽の縁ふちに座り足だけ湯船に浸かって涼む。
浴室内は蒸気で暖かく、湯気も熱気もすごい。
けれど湯船に浸かっているよりは涼む事が出来て、少しばかり気持ちが落ち着きを取り戻しはじめた。
「……でもなんで、あんな突然居なくなったのよ。居なくなるなら一言くらい伝えてくれても良かったじゃない」
「僕だってそうしたかったよ。けど、耳の調子が悪かったからね……そのせいでさらに次元が歪んでる事に気づくのが遅れてしまったんだ」
「……何それ! それじゃ、また他の世界でもおかしな事になってるって事?」
「うーん……まだそうと決まった訳じゃないんだ。けど、その可能性もあるんだ。だから僕は次元の狭間へ戻って、様子を見てこなくちゃいけないくって……これ以上何か異常な事が起こると厄介だし……みんなに怒られちゃうし……」
しょんぼりと頭を項垂れるノア。
そのこめかみから汗が滴り、重力に従って湯船に落ちた。
なんだかそれが涙にも見えてくるくらい、打ち拉がれている。