私は異世界の魔法使い?!
……なんて衝撃的な。
しかもあの話に出てくる白うさぎがノアのご先祖様……。
「だから僕は代々受け継いでる由緒正しい時の番人なんだ。それなのに僕が管轄してる次元でばかりトラブルが起きて……こんなのがバレたらみんなになんて言われるか……」
何を言われるのかは分からないけど、どうやら相当なものらしい。
その証拠に、今度は本当にノアの瞳には涙が浮かんでいた。
「だからごめんね。僕、おねぇちゃんの力になりたいとは思うし、知らない世界で心細いとは思うんだけど……これ以上、この次元ばかりにいられないんだ」
言った後、再び指をモジモジさせる。
同時に白い兎の耳をピクピクと小さく動かして。
「……はぁ、わかったわよ。それにもうすでに大変な事はあったけど、私は元の世界で元の自分の姿に戻るって決めたから」
元の、生きている自分に。
何があってもめげないと覚悟は決めた。
だから私はもう、別にひとりでも大丈夫。
「あっ、ありがとう……! それを聞いて安心したよ。なるべくちょくちょく会いに来るからね。おねぇちゃんは頑張ってこっちの世界にいるもう一人のおねぇちゃんを探し出しててね!」
「分かった、わかった」
嬉しそうに浴室内を飛び回るノアに、つい微笑みが溢れた。
まだ何も状況は変わっていないし、何も得れていない。
なのになぜか一歩ずつ前に進んでいる気がして、私は湯船から上がり、ノアは再び姿を消した。