私は異世界の魔法使い?!
◆
朝、目を覚ます。
いつもの朝。何の変哲も無い、朝。
カーテンの隙間から差し込む日の光を浴びて、ぼーっとした脳が徐々に覚醒を始める。
「……全部、夢だったのかな」
手のひらを見てみると、透けてる様子は無い。
もちろん怪我も無い、いたって健康だ。
けれどこの胸の痛みはなんだろう……。
これも夢のせい?
そっと頬に触れてみる。そこには涙で濡れた後がある。
眠りながら泣いていたのだろうか。
「……っつ……」
じゃあこの苦しみも……?
夢の中で出会った人達も。あの冒険も。
全部全部……夢なの?
この、甘くて苦しくて……それでいて、歯がゆい気持ちも?
「……うっ、……」
苦しくて、悲しくて、思わず胸を押さえて崩れるように蹲る。
その時、私の手は何かに触れた。
固くて、ひやりとしたもの。それが何なのか確かめようと、涙を拭って手に取った。
「……ワンド?」
赤い石の欠片。
それはあの世界で共に戦い、私を幾度となく助けてくれたもの。