私は異世界の魔法使い?!





朝、目を覚ます。


いつもの朝。何の変哲も無い、朝。

カーテンの隙間から差し込む日の光を浴びて、ぼーっとした脳が徐々に覚醒を始める。



「……全部、夢だったのかな」


手のひらを見てみると、透けてる様子は無い。

もちろん怪我も無い、いたって健康だ。


けれどこの胸の痛みはなんだろう……。


これも夢のせい?


そっと頬に触れてみる。そこには涙で濡れた後がある。

眠りながら泣いていたのだろうか。



「……っつ……」


じゃあこの苦しみも……?


夢の中で出会った人達も。あの冒険も。



全部全部……夢なの?



この、甘くて苦しくて……それでいて、歯がゆい気持ちも?



「……うっ、……」


苦しくて、悲しくて、思わず胸を押さえて崩れるように蹲る。

その時、私の手は何かに触れた。

固くて、ひやりとしたもの。それが何なのか確かめようと、涙を拭って手に取った。




「……ワンド?」



赤い石の欠片。

それはあの世界で共に戦い、私を幾度となく助けてくれたもの。



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