私は異世界の魔法使い?!
ひとり悶々と考えてると、今度は別の部屋の扉を開けカイトはその中に消えていった。
小走りでその後を追おうと部屋に差し掛かった時、カイトは部屋の中から現れた。
それはちょうど私が中を覗き込もうとした瞬間だったせいで、危うくカイトの胸に顔をぶつけるところだ。
わわっ!
危なっ!
元々低い鼻がさらにぺしゃんこになるところだ……。
ぶつかるほんの数センチ手前でなんとか堪えた私に、相変わらず愛想のない表情が口を開く。
「おい……」
「なっ、なに……?」
「これ、持っておけ」
言って投げ渡されたものを慌てて両手で捕まえる。
捕まえたそれは……杖?
「魔導師の杖だ。持ってるだけでも役には立つ。形だけでも持っておけ」
「形だけって……」
そんなのに意味あるの?
ちょうど腕と同じくらいの長さをした杖。
それはこの建物と同じ真っ黒なフォルムで細い二つの枝が連理し、その先端には拳くらい大きな赤い石がはめ込まれている。
その石はルビーのように美しく輝いていた。
しかしその輝きは、どこか私の心をザワザワと波立てる。