私は異世界の魔法使い?!


ひとり悶々と考えてると、今度は別の部屋の扉を開けカイトはその中に消えていった。

小走りでその後を追おうと部屋に差し掛かった時、カイトは部屋の中から現れた。

それはちょうど私が中を覗き込もうとした瞬間だったせいで、危うくカイトの胸に顔をぶつけるところだ。


わわっ!

危なっ!

元々低い鼻がさらにぺしゃんこになるところだ……。


ぶつかるほんの数センチ手前でなんとか堪えた私に、相変わらず愛想のない表情が口を開く。


「おい……」

「なっ、なに……?」

「これ、持っておけ」


言って投げ渡されたものを慌てて両手で捕まえる。


捕まえたそれは……杖?


「魔導師の杖だ。持ってるだけでも役には立つ。形だけでも持っておけ」

「形だけって……」


そんなのに意味あるの?


ちょうど腕と同じくらいの長さをした杖。

それはこの建物と同じ真っ黒なフォルムで細い二つの枝が連理し、その先端には拳くらい大きな赤い石がはめ込まれている。

その石はルビーのように美しく輝いていた。

しかしその輝きは、どこか私の心をザワザワと波立てる。



< 99 / 700 >

この作品をシェア

pagetop