マリー
「この汚い人形って何? お母さんからの贈り物?」
「やめて」
マリーを取り返そうと駆け寄ったが、優子はその人形を上方に持ち上げる。知美より背丈の高い彼女が持ち上げたマリーを取り戻すことはできなかった。
そのとき、部屋の奥で何かが弾けるような音が響く。振り返ると、突っ立てにかけていた鞄が床に落ちていた。
「この年になっても人形なんて本当、暗い子。だから真美以外に友達が出来ないのよ。真美だってあんたみたいな暗い子と一緒にいたくないって思っているのよ。あの子は典型的ないい子だから、あなたと一緒にいてあげているだけ。勘違いしていて呆れちゃう。わたしの両親だってそう。可哀想なあなたの話し相手になっているだけ。あなたはこの家の子供じゃないのよ」
優子は知美を肘でついた。その反動で、知美は尻もちをつく。
マリーが床に転がる。そして、栗色の髪が数本、マリーの体に降り注ぐ。
「あ、髪の毛抜けちゃった。こんな古い人形だもんね。仕方ないか」
彼女はにやついた笑みを浮かべながら、腰に手を当て、知美の顔を覗き込む。
「やめて」
マリーを取り返そうと駆け寄ったが、優子はその人形を上方に持ち上げる。知美より背丈の高い彼女が持ち上げたマリーを取り戻すことはできなかった。
そのとき、部屋の奥で何かが弾けるような音が響く。振り返ると、突っ立てにかけていた鞄が床に落ちていた。
「この年になっても人形なんて本当、暗い子。だから真美以外に友達が出来ないのよ。真美だってあんたみたいな暗い子と一緒にいたくないって思っているのよ。あの子は典型的ないい子だから、あなたと一緒にいてあげているだけ。勘違いしていて呆れちゃう。わたしの両親だってそう。可哀想なあなたの話し相手になっているだけ。あなたはこの家の子供じゃないのよ」
優子は知美を肘でついた。その反動で、知美は尻もちをつく。
マリーが床に転がる。そして、栗色の髪が数本、マリーの体に降り注ぐ。
「あ、髪の毛抜けちゃった。こんな古い人形だもんね。仕方ないか」
彼女はにやついた笑みを浮かべながら、腰に手を当て、知美の顔を覗き込む。