マリー
第八章 事故、そして悪魔の所以
 駅を出ると車のエンジン音と、人のざわめきが知美を迎えてくれた。

 見渡す限り空が拝める将の家とは違い、空間を埋め尽くすようにビルや建物、駐車場が敷き詰められている。以前は汚いと思っていた道に転がる空き缶も郷愁が湧く。

 知美の日常は大きく変わらない。だが、あの日以来、知美はマリーを見なくなっていた。今まで気づかなかったものに気付くのを怖れていたのだ。

 そして、マリーが夢に出てくる事も一度もなかった。

 真美は駅を出ると、目を輝かせ、辺りを見渡していた。

「すごい」

 明るく弾んだ声に、思わず顔を綻ばせた。

「真美はあまり来たことないの?」

 真美はうなずく。

「一か月に一回くらい。親と一緒だからなかなかゆっくり見て回れないの。今日はいろいろ見てみていいかな」

「分かるところは案内できると思うよ」

 十二歳といえども長い間住んでいると、辺りにどのような店が立ち並んでいるかは大まかに把握している。

 真美がまず行きたがっていたのはぬいぐるみや雑貨などを売っている店だった。真美の誕生日が近く、親から好きなものを買ってきていいと言われたらしい。
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