マリー
 知美が足を止めると、店の前には中心に行くにつれて赤味が強くなっていく花が植えられていた。

「可愛い花」

 真美は声を弾ませながら、花を覗き込む。

 二人は顔を見合わせると店の中に入る。

 真美の声は店内に入るとより元気になる。

 彼女は店の奥にある熊のぬいぐるみの前まで行く。知美の体を数周り小さくした程の大きさがある。

 知美が追いつくと、彼女は舌をぺろりと出して「これじゃ大きすぎるね」と笑う。

 二人はその手前にある両手で抱きかかえられるサイズの熊のぬいぐるみの前に行く。

「これはどう?」

 真美は気に入ったのか何度もうなずく。

 二人は二階建ての店内をくまなく眺め、再び最初に店内に入ったときに見たクマのぬいぐるみの前に戻ってくる。

「やっぱりこれにしようかな。一番可愛いもの」

 真美は一番手前のぬいぐるみを手にすると、知美に声をかける。

 二人がレジに行くと、将と同世代か年上と思われる女性が優しい笑顔を浮かべてぬいぐるみを両手で受け取った。

「宅配も受け付けていますので、良かったら言ってくださいね」

 二人は顔を見合わせ相談するが、真美は「早くほしい」と言い持って帰ることになった。
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