マリー
 真美の荷物を知美が預かる事になり、二人はお店を出た。そして来た道を戻っていく。

「良いお店を教えてくれてありがとう。大事にするね」

 知美は真美の笑顔を見ていると嬉しくなった。

「でも、それじゃ他のところ寄れないね」

「どうしよう」

 真美は考えていなかったのか、困った顔を浮かべる。

「さっきのお店で預かってもらおうかな」

「今日は早めに帰って、夏休みになってから、また今度来ようよ」

 知美の提案に真美は二つ返事で頷いた。

「でも、わたしの買い物だけしちゃってごめんね。本当はもっといろいろ行きたかったのに」

「気にしないで。わたしも楽しかったもの」

 その時、真美が何か声をあげる。

 隣を歩いていた彼女が二件前の店の前まで戻り、店内を指差す。

「これ、可愛い」

 無邪気な真美の声と同時に、「危ない」と叫ぶ低い男性の声が知美の耳に届いた。

 同時に知美の視界を茶色の線が横切る。それが髪だと理解した時、岡江や優子の言っていた言葉が脳裏によみがえった。
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