マリー
視界から真美が消え、その代わりに黒い車体が知美の視界の大半を占める。
光沢のある車体を彩るように、光を帯びる無数の粒子が空中に散らばる。
車がショーウィンドウに突っ込んだのだ。
知美の足もとに真美が握っていた熊のぬいぐるみの破片が落ちていた。
人がスローモーションのように寄ってくる。知美の肩を誰かがつかむのが分かった。だが、そのつかんだ人を確認することも忘れ、先ほどまで真美の立っていた場所をただ眺めていた。