マリー
 全てを話し終えると、彼らはお礼を言い、去っていく。

「ここにいないほうがいい。今日は帰ろう」

 将は知美と目線を合わせて、肩を叩いた。その時、将の視線が知美の傍らに置いてあるバッグを捉える。

「それは真美ちゃんの?」

 知美が頷くと、彼はそれを両親に渡してくると言い、知美に出口までの大まかな道筋を教えると、出口まで行くように伝えた。知美はうなずいて立ち上がると、彼に言われたとおりにに歩き、前面ガラス張りを施された出口に到着する。今日は休日のためか、警備の人が病院の出入り口にいるだけで閑散としている。

 将を待つと、三分ほどで彼がやってきた。

 彼は知美の肩を叩き、外に出ようと促す。そして、外に出ると、眩い光が辺りに降り注ぐ。まだ昼だったことを今更ながらに思い出す。

「真美、大丈夫だよね」

「意識が戻ったら教えてくれると言っていたよ」

 その言葉に力なく頷く。

 車に乗り、ドアが閉まったのを確認して、将に問いかけた。

「お母さんはどうしてこの町の人に嫌われれいるの? 悪魔って何?」

 将は知美の頭を軽く撫でる。

「気にしなくていい」

「わたしにとってお母さんは怖い人だった。でも、悪魔だとまでは思わない。クラスのみんなはお母さんを悪魔だ、人殺しだと言う。でも、おばさんも校長先生もお母さんのことを良い子だって言うの。もう、意味が分からない」

 知美の目から大粒の涙があふれ、手の甲を浸していく。


 将は延々に続くのではないかと思える長い息を吐いた。その息の最後に言葉が続く。
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