マリー
「お父さん?」

「お父さんのお母さんかな。美佐は手帳を持っていて、そこにこの家の電話番号が書いてあったらしい。向こうは美佐の荷物を勝手に調べた事と、ずっと連絡が出来なかったことを謝っていたけど、僕は美佐が元気でいてくれてほっとしたよ。

川瀬さんと話し合って美佐が連絡を取ろうとするまで会わないことになったんだ」

「その時は変なことは起きなかったの?」

 将は頷いた。

「川瀬さんには美佐と同じ年の娘がいたらしい。その時にはもうなくなっていたらしく、娘が帰ってきたような気がしたと。その時は幸せだったんだと思う。美佐に再会してからも、その時の事を楽しそうに話してくれたよ。

それから三年後、美佐から電話がかかってきた。結婚することになった、と。相手は川瀬さんの息子さんで、良い人だったよ。僕は彼女が幸せになれると、喜んでいた」


 だが、疑念が心を過ぎる。美佐の周りには誰もいるように思えなかったのだ。

 父親もそうだし、彼の両親と思われる人もいない。写真さえもあの家にはなかった。

 知美の頭を将が撫でる。
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