マリー
「知美ちゃんは察しが良いね。そう、幸せは長く続かなかったんだよ」
彼はそこまで言うと、運転しながら話すと車のエンジンをかけた。
「知美ちゃんにどこまで話をしていいか分からないけど……。間もなく美佐は赤ちゃんを妊娠したんだ」
だが、そのとき知美は首をかしげる。十八か十九で結婚した美佐が自分を生んだのは二十二のときだ。間もなくというには時間が空きすぎている気がしたのだ。
「それはお母さんが何歳のとき?」
将は短く息を吐いた。
「美佐は流産をして、赤ちゃんを産んであげることができなかった、と言っていた」
知美はその状況を想像して唇を噛み締める。
「この話は」
「いいの続けて」
知美は首を横に振り、彼女を気遣った将の言葉を遮った。
彼女が嫌われている理由を知りたいと思うなら、決して避けて通れない道だと思ったのだ。
「そのときの状況は見れたものじゃなかった。それでも知美ちゃんのお父さんの手伝いもあってなんとか落ち着いた。それからしばらく経って、知美ちゃんを妊娠したことが分かって、すごくうれしそうだったよ」