マリー
 赤い文字が頭をちらつき、唇を噛んだ。彼に優子を悪く言えるわけもない。

「サボりか」

 誠一は呆れたように微笑んでいた。彼の軽い口調が幾分か知美の心を楽にする。

「伯父さんは仕事は?」

 良く考えると知美が家を出る時、彼はリビングにいた。いつも知美がリビングに降りてくるころには家を出てしまっているのだ。

「知美ちゃんと同じで休み。学校には連絡しておくからきにしなくていいよ」

 おどけた様子の彼を見て、知美は今日初めて笑った。

 彼は知美をじっと見ると、目を細めた。


「少しだけでかけようか」

「どこに?」

「それはついてからの楽しみ」

 彼は目立たない場所に隠れているように言うと携帯電話を取り出した。

 電話の途中、彼は知美に、教室に入ったのかを尋ねてくる。知美は教室に入り高田と顔を合わせたと伝える。

 彼はその内容を端的に伝え、車を持ってきてほしいと言うと、電話を切る。
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