マリー
 二人はその後、近くの店で食事を取り、将の家に帰る事にした。

 家に戻ると、伊代は笑顔で知美を迎えてくれた。彼女は知美の手を引き、リビングに連れて行く。そこには知美の好きなイチゴショートが並べられていた。

「たくさんあるから、好きなだけ食べてね」

 彼女はコーティングされたケーキの箱を掲げ、知美に見せる。

「ありがとう」

 知美は唇を軽く噛むと、小さく頷いた。

 知美はケーキを五つ平らげると、部屋に戻る。そして、部屋の電気をつけ、鞄を机の上に置いた時、床に黒い塊が付着しているのに気づいた。

 知美は屈み、それにをじっと見る。

 何か落としたのかな。

 そう思い、ティッシュで床を拭いたが、固くてはがれない。

 知美はそれを見て、嫌な予感を感じる。根拠があったわけではない。

 そして机の引き出しを開け、そこに眠るマリーを見た時、予感が確信へと変わる。

 彼女の艶やかな髪が一点だけ闇を落としていた。

 知美にはそれが血にしか見えなかった。
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