マリー
 マリーをどうしたら良いか載っている本を探したが、それらしい本を見つける事はなかった。

 だが、少なくとも一か月は知美の周りで不審なことは起こらないはず。

 その安堵を胸に帰宅する。

 伊代は帰りも迎えに来てくれた。彼女の「どうだった」との問いかけに、知美は楽しかったと答えた。

 家に戻ると、鞄を片づけるために真っ先に部屋に戻る。だが、鞄を床に置こうとしたとき、妙なふくらみがあるのに気づいた。中を見た知美は、思わず鞄を床に投げつけた。そこからは栗色の髪の毛が流れ出る。

「確かにお母さんの部屋においたはずなのに」

 おいたつもりになっていたのだろうか。

 電気のつかない美佐の部屋をあけ、ふすまを開け、ビニールの中にマリーを片づけた記憶が鮮明に蘇る。そして、知美はビニールの感触が残る手を凝視していた。
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