マリー
 すぐに水の流れの一部となったバッグが、時折、水の上に顔を出しながら、ゆっくりと流れていく。

 美佐の人形を勝手に捨てる事に対する罪悪感はある。だが、このまま身近な人が傷つくのは辛すぎた。これが知美には精一杯の決断だった。

「ごめんなさい」

 罪悪感から逃れるために、言葉をつづる。

 知美はバッグが見えなくなったのを確認して、念のため周囲を見渡す。

 何もないのを確認して、駅に戻ると、家に帰る事にした。

 部屋に戻り、マリーも鞄もないのを確認して、知美はほっと胸をなでおろした。

 もうこれで全て終わったのだ、と。
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