マリー

「どうして」

 誰かが嫌がらせをしたのかと考えるが、川に投げた人形をどこのだれが拾えるというのか。

 状況を否定しつつも、知美は部屋を飛び出し、リビングに行く。

 リビングには伊代と将の姿があった。ふたりとも知美を見て驚いている。

 二人なわけがない。優子がいくら自分を嫌っていても、そこまでするとも思えない。もっとも彼女は昨日から友人の家に泊まりに行っているので家にいない。

「おはよう」

 朝ご飯を食べている将の言葉に返事をすると部屋に戻る。

 眠る前に彼女はいなかった。だが、起きたらいた。

 考えてもその方法が分からない。

 知美はマリーをどうやれば完全に自分の前から消せるかを考えていた。

 その中で思いついたのが燃やすという選択肢だ。

「わたしを殺す、良い方法でも思い付いた?」

 笑いを含んだ言葉に、マリーを凝視する。

 確かにその声はマリーから聞こえてきたのだ。

 その声は夢の中の少女の声とも一致する。
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