マリー
「まあ、燃やしても死なないんだけどね。どうせわたしはもう死んでいるし、別の器を探せばいいだけ。あなたの体とか」

 彼女の声のあどけなさが余計に知美を震わせた。

「何が目的なの? 伯父さんと伯母さんも傷つけるの? これ以上周りの人を傷つけないで」

「あなたって現金ね。三浦伊代ね。この家におかあさんの写真がないのも、友達から返事がこないのもおかしいと思わないの?」

「何を言って」

 だが、知美はその二つに共通するものを知っていた。

「この部屋を出た突き当りに物置があるでしょう。物置の一番奥にノートサイズの水色の箱があるわ。そこを見てみたら良いわ。あなたが本当に目の前の人達を信じて良いのか」

 知美は頭に浮かぶ嫌な予感を打ち消すべく、部屋を出て物置の扉を引く。伊代と将に制限されていたわけではないが、ここにははいったことがない。

 中は几帳面な伊代らしく、物置の中は綺麗に箱が積まれ、整理整頓されている。

 彼女の言っていた水色の箱は物置の奥手にぽつんと置かれていた。
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