マリー
 白井将が帰宅したのはそれから三時間ほど後だった。彼は詳しいことは何も語らず、「お母さんだった」と険しい表情で告げた。



 それからのことは伯父である将が全てしてくれた。知美は母親がなくなり、あれほど怖れていたのにも関わらず、胸にぽっかりと穴が空いたような気分だった。

泣くこともなく、ただぼんやりと机に伏せたり、ベッドで眠ることが増えていた。

 そんな知美を気遣ってか、将はほぼ連日知美の家に寝泊まりをしていた。

 お葬式は知美と将の二人で行った。土気色の肌をした美佐を見ていると、この間まで酒を飲んで怒鳴り散らしていたことが愛しくさえ思えてきた。

 時折、将の目には涙が浮かぶが、知美はなくことはできなかった。

 母親との間に良い思い出がないためないのか、母親の死を実感できていないのか、その理由は彼女にも分からなかった。

 火葬場から帰ってきた将は、知美の手を握る。

 彼の目は血走り、睡眠不足なのが伺える。美佐がなくなってから、ほとんど眠っていないのだろう。

「大丈夫か?」

 うなずくより前に、彼の手が知美の額の少し上を撫でる。
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