マリー
「僕の家で一緒に暮らそう。学校は転校しないといけないけど。中学はこの辺に全寮制の学校もあるから、こっちに戻ってきても構わなないよ。もちろん、僕の家から通えるところを探しても良い」
知美にとっては彼の話に現実味はなかった。
だが、子供が一人で生きていけないことは分かっている。
「お母さんは帰ってこないんだよね?」
将は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるとうなずいていた。彼の表情を帯びている悲しみがより強いものになる。
はっきり自分の言葉で表現して、視界がじんわりと滲む。
知美は彼の問いかけに答えを示すべく、小さく頷いた。
その後の手続きは将がほとんどやってくれた。
「お母さんの部屋は?」
彼は目を細めると、知美の頭を撫でる。
「それは僕がしておくよ。知美ちゃんは自分の部屋を掃除したらいいよ」
あまり物持ちがよくないこともあり、知美の荷物の整理はすぐに終わった。
時間の経過とともに母親がいないことを実感して、心が痛む。だが、伯父の存在が知美の心を元気づけてくれたのだ。