マリー
「君のお母さんはその子のことをマリーと呼んでいたんだ」

 知美は目を見張り、岡崎を見る。

 彼は知美が問いかける前に、「まずは麻里の部屋に行こう」と伝えた。

 二階の一番奥にある部屋に連れて行かれた。その部屋にはベッドや本棚などがそのまま置かれている。それらはほこりをかぶり、長い間放置されていたのが分かる。

 知美の視界に机の上に置いてある本が映る。

 岡崎はその本を手に取ると、知美に渡した。

「これがその子のつけていた日記だよ」

 知美が最初に開いたのはページがよれていたところだ。そこに書いてある文字を見て、胸のあたりがつかまれたような息苦しさを覚える。

 皆嫌い。皆大嫌い。

 そう乱暴な字で書かれていたのだ。

 知美は岡崎を見ると、彼は頷いた。

 読めと言いたいのだろう。

 知美はページを遡っていくと、文面が一転する。そして、そこには柔らかな文面で、ある女の子の名前が記されていた。
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